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第96回 服部郁子

『不気味の谷』

リアルな人形がこわい。医療用や実験用のダミーは何か物言いた気だし、蝋人形は生物でないのは確かなのに、こちらを見透かすかのような視線を投げかけてきて私を落ち着かない気分にさせる。一方、スターウォーズに登場するR−2のように、アナログな感じのロボットには無気味さを感じないのは何故だろう。
先日の新聞の紙面の「未来のリビング?」と唱われた写真では、主人の指示に従い湯のみを片づけるロボットが紹介されていた。このロボット君は、ガンダム的風貌で美しくはないが無気味でもない。
ロボット工学上には、ロボットや他の擬人的対象に対する人間の反応に関する「不気味の谷」という概念がある。これは、ロボットの見かけや動作が人間に近付くにつれ親しみの度合いは上がっていくが、ある非常に近い類似度で親密感は急落し、見かけや動作が人間と見分けがつかなくなる程に近付くと再びより強い好感に転じるようになる。という仮説である。人間と見分けがつかない程のロボットは未だ出現していない故、仮説と云わざるをえないが、「非常に近い類似度」の蝋人形はまさに不気味の谷に落ちている存在なのだろう。
リアルすぎるCGのキャラクターもしばしばこの「不気味の谷」に落ちる。トイストーリーの中の男の子より、インクレディブルのデフォルメされたキャラクターのほうがより親しまれるということだろうか。
似て非なるものに対する拒絶感、人は本能的にフェイクを察知するということか。
それにしても、未来のリビングに居るロボットはできれば、擬人化するより、美しいマシンに育てて欲しいと思うのだが・・。


図版出典:フリー百科事典『ウィキぺディア(Wikipedia)』

2007/01/13

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