HOMEコラムINDEX>建築家のコラム
第89回 諸我尚朗

『元町商店街VS伊勢佐木モール』

私が大学生時代のことですから、30年以上も前になりますが、地区計画上話題に上っていた元町商店街と伊勢佐木モールがあります。皆さんも御存知のように、元町商店街はブランドのお店が並ぶハイクラスな街、かたや伊勢佐木モールはどちらかというと庶民的なイメージが定着していると思います。

元町商店街はボンエルフという、人・車・共存のプロムナードになっています。それぞれの店鋪は軒を歩道の巾分だけ張り出して、雨に濡れないアーケード状を形成しています。個々の建築は個性的ですが、建築物でアーケードを形作るというルールの元に建てられているからです。

何十年たった現在でも、同じルールの上に建替えたり改装が行われています。石畳のボンエルフには高級外車が乗り付けられていて、それこそ『お洒落な街』といった風情です。この現象は、メインストリートと並行に走る裏道にもスプロールしてきて、メインストリートよりはむしろ、好感の持てるスケール感のいい街並となっています。ただ残念なことに、これも30年以上にも前からの季節の催し物でチャーミングセールというのがありますが、今では様子が変わってしまいました。以前は、ショーウィンドウに飾られていたお目当ての品が、この時ばかりはバーゲンをされていたのが、今でははっきりバーゲン品とわかるものがほとんどになってしまいました。地下鉄の<元町中華街>駅が出来てからすっかり観光地となり、仕事場が近い割には近寄れなくなってしまった場所になりました。

比較して申し訳ないのですが、伊勢佐木モールは非常に雑多でエネルギッシュなのですが、故か、たたずまいがあります。元町商店街のボンエルフ化と同じ時期だったと記憶していますが、大胆にもメインストリートを常時歩行者天国にして、ケヤキ並木を創りだしてしまいました。

当時、建築の勉強をしている私をはじめ、廻りの先輩から学友まで含めて、どちらかというと元町商店街のほうが建築的で、伊勢佐木モールの植栽頼りのホコテンには興味が浸透しなかった事を覚えています。しかし、今になってみると、貧弱だったケヤキも大木となり、その昔から存在していたような景観に圧倒されます。道行く人々にも変化があり、アジア諸国の人からロシア、ブラジルetcでしょうか、私には区別がつきません。とにかく国際色豊かではあるのですが、この大きなケヤキの元では、同じ国の隣人のように思えてしまいます。元町商店街にも伊勢佐木モールにも、珈琲のスターバックスがあるのですが、伊勢佐木モールのスタ−バックスのテラスで、珈琲を飲みながら、ボーッと道行く人々を眺めていると、しばし時を忘れさせてしまうほどです。(両方のスタバで試してみてください)ケヤキと、年輪の刻まれた建築物と、その距離感、そして、人、人、人。もしこのプロムナードにこの大きなケヤキの並木がなかったとしたら、とても長居のできる場所とはならなかったでしょう。物造りの一端を担う者として、たった30年の歴史ではありますが、二つのこの違う場所を見て来て思う事は、視点を今一度遠くに見据えなさいよということを、改めて教えられているようです。

 P.S. 伊勢崎町に縁もゆかりもある「メリー」さんのドキュメンタリー映画が、横浜ニューテアトルで11月18日〜11月30日まで、リクエスト上映されます。御覧になっていない方は是非どうそ。

2006/11/24

>コラムINDEXへ戻る