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第88回 水口裕之

『BLUEPRINT』

ほとんど個人で仕事をしている状態なので、気がつけば最新のテクノロジーというやつにいつの間にやら置いてきぼりにされているようなことが多い。大きい会社にいれば誰かしらその道に詳しい人がいて、自然と情報が入ってくるものであるが、今ではなかなかそうはいかないので、困ったときはネットの情報頼みである。

最近、必要があって今頃になって事務所内のコンピュータのネットワークを初めて組んでみた。LANというのは難しくて素人がなかなか手を出せないものだと昔のイメージで思い込んでいたから、無線LANのセットを買って説明書通り接続してみて、あまりに簡単にできてしまったので逆に驚いてしまった。これに気をよくして次は「光」か!と早速ひかり電話を導入しようとしたら、それは事務所ビル内の回線が古くて無理だったのであるが。。。

そもそもバリバリの理系人間で、かつ新し物好きだったので、昔は建築業界の古い体質や、あまりのローテクさ加減というのがとてもいやだった。だから建築の設計をやり始めてまもなくCADが導入されたときには率先して飛びつき、CGなんかもとりあえず自分で一通り試してみた。年配の先輩方には「やはり図面は手書きでないと、、」と抵抗する人もいたが、今ではそんな声もついに聞こえなくなり、どこの事務所でもCADがないと全く仕事にならないのではないだろうか。

皆さん御存知だと思うが、青焼き機(正式にはジアゾコピー機)というものがある。建築関係では図面のコピーは青焼きでするのが常識で、逆に普通のコピーを「白焼き」と呼び分けなければならなかった。新米の頃にさんざん青焼きを取らされたおかげで、今でもコピー屋のおばちゃんの3倍のスピードで青焼きを取ることができるだろう。この青焼き機というものを、一枚づつしかとれないし、アンモニア臭いし、すぐに紙詰まりを起こすしと建築設計業界のローテクの象徴のように苦々しく思っていた。確かにいいところもあってA2やA1など大判サイズでは今でもコストが圧倒的に安いこと、光学的なコピー機のように伸びやずれが生じないこと、鉛筆などでの書き込みがしやすいことなどがある。うちの事務所では、小さな住宅の設計図でもなるべく大きな図面で、文字や寸法などを細かく多く書き込みたいということで図面が大きいため、今でもずっと青焼きを使っている。

その青焼きが急速に廃れつつあるようだ。同業の皆さんも大量スピード印刷できるA3サイズのレーザーコピーにどんどん乗り換えているそうだし、工務店にも珍しがられたリ、コピー屋で「青焼き」という言葉が通じなかったり、果てにはコピー機の営業マンが知らなかったりということがあった。

そろそろ転身を図る時期なのか?マックからウィンドウズへの乗り換えは極めて早かったのであるが、今回はかなり乗り遅れてしまっているようである。ちなみにCADも相当に早く描けるようになった一方、それ以上にフリーハンドのスケッチがいつの間にか上達していて、詳細図などはいつの間にか今はほとんど手描きであるし、模型をチマチマと作っている時間になんだか癒しを感じたりしてしまう。

ローテクの心地よさというのは確かにある。しかしそれにずっと安住していると気がつけば、ビデオの予約録画ができない親を笑えなくなる日も近いのかと、少し悩んでいる。。。

2006/11/05

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