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第29回  神田雅子

『自動車の旅』
マシンとしての車にはほとんど興味は無い。が、こよなく運転が好きである。決してスピード狂ではなく、むしろスピードは怖い。ちょっとよそ見は多いかもしれないが、ドライバーとしての性格はいたって温厚だと自負している。

モノゴコロついた頃には、車の運転をしたくてたまらなかった。
小学校にあがる頃には、運転する父の膝の上に座りハンドルを握らせてもらった。
16歳になるとすぐ原付の免許証を手に入れ、YAMAHAのTOWNYというソフトバイクを乗り回した。それも結構自由な移動を手に入れた感があったけれど、4輪ほど外部環境から守ってくれないし、そう遠くへも行けなかった。それに2輪には誰かと共有できる空間もなかった。

子供の頃の家族旅行はほとんど車の旅だった。能登半島などへの遠出が多かった。
自動車道はまだ全線がつながっておらず山越えは険しく、崖っぷちの親不知、子不知などの難所もあり、父と母が運転を交代しながらの長旅だった。
普通のセダンだったが、足元の部分にクーラーボックスなどを置いて後部座席を平らにし、タオルケットを敷きつめ、私たち3人姉弟はいつでも雑魚寝ができた。
お月さんがずっとついてくるなあ、と夜空を眺めながらも車は走り続けた。これから行く遠浅できれいな海も楽しみだけど、その車中が至福だった。

そのせいかどうかはわからないけれど、今もたいていどこへでも車で出かけたい。よほどの雪ではない限り、多少の寝不足でもハンドルを握って出かける。
好きな音楽をかけ、好きなところに立ち寄って、好きなときに何かを食べる。そう、運転しながら何かを食べるのが大好きだ。
何時までに到着、という縛りがない帰り道などは、眠くなったらエンジンを止めて仮眠する。たいていブレーキをぎゅーと踏み込みながら、1時間ほどで目が覚めるのだけど。

事務所の名前をアーキキャラバンとしたのは、多くの現場へ行き、遠くのクライアントともフットワーク良く動いて仕事をしようよ、という意味がある。いずれモバイルが完備すれば、今日は湖畔で、来週は海岸沿いで、と気持ちの良い場を車で移動しながら仕事をしたいという思いもある。
ひとところに固定され、その場から動くことのない建築をつくる仕事をしている者がこんなことを思うのは、なんだか矛盾を抱えているようであるけれど。
2005/03/08

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