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第287回 増田 奏

『 騒動!新国立競技場 』

 「新国立競技場」が、一から見直されるようだ。まことに御同慶の至りである。
私がそれを喜ぶワケはいたって単純だ。ザッハ氏のオリジナル案だろうが、縮小案
だろうが、あんな珍妙なスタイルの造形が日本の首都にあって欲しくないだけだ。
(デザインとは、造形の美しさや面白さだけでなく、使い勝手はもちろん、コスト
 や製造工程まで含むものと思い、ここでは敢えて区別して「スタイル」と言う)
はっきり言って、私はあのスタイルは大嫌いだし、おぞましくさえ思う。イヤだ。

 近頃は建設コストが問題にされ、テレビニュースなどで盛んに報じられている。
しかし、もっと前から当選案(結果発表:2012/11)に対して、反対の声は
挙っていた。建築家の中でもモラリストとして知られる槙文彦氏が2013/8に
日本建築家協会JIAの月刊誌上で異議を唱えたのがきっかけで、建築家や市民も
交えたシンポジウムなどが開かれていた。私もJIAの会員だが、怠け者で名簿上
だけの幽霊会員だから、そんな会合・会議に出たわけではない。ただ、誌上の記事
を読んで、「そうだ、そうそう、つぶしちまえ!」と勝手に独りで応援していた。
 建築家達の反対理由は、その規模の馬鹿デカさと景観上の問題に終始していた。
スタイルのことは、どなたも話題にしなかったとおもう。そりゃそうだ。もしも、
そんなことを一言でも言ってしまうと、好き嫌いの話になって的が絞れなくなる。
なるほど、まことに真摯である。立派なスタンスである。さすが建築家だ。偉い!
(でも、本音では皆んなアレを「全然、好きじゃなかった」んじゃない?)

 大学で週一回、建築設計を教えている。当選結果発表の後に出講した日のこと、
学生達が、ネット発表の選考結果を映したノートパソコンを囲んで談笑していた。
 『増田先生、どう思います?コレ』
 「俺は、ヤだなあ・・・」
 『ですよね』
 「なんかガンダムみたいじゃん」
 『先生、それをいうなら、エヴァンゲリオンですよ』
 「そうそう、それそれ!」
 『それにしても、今更?って、感じですよね』
設計を習い始めて、たかだか3年目の学生である。彼らの議論はザッハ案は素通り
して、他の入選案を比較していた。

 審査委員長の安藤忠雄氏は世界的に有名な建築家。国内外に氏のファンは多い。
私だってその一人だ。代官山、表参道、南青山。関西出張の際には時間を作って、
大阪難波辺りの実作を見て廻った。解り易い造形で、期待を裏切られた事は無い。
東京大学が氏を建築学科の教授として迎えたときは、本人だけでなく、東京大学の
英断にも拍手した人は多かったと思う。・・・その安藤忠雄が、何故あんな案を?

 もし、最優秀案が素晴らしいものであったのなら、たとえそれを実現するために
予算をオーバーするとしても、建築家達は「コレは是非実現すべきだ」と動いたに
違いない。建築家って、それくらい血の気の多い連中だ。時には、「困った人達」
にさえなる。・・・それなのに今回は、皆んな健気だなあ・・・

http://www.jpnsport.go.jp/newstadium/Portals/0/NNSJ/winners.html

2015/07/28

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