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第283回 北川裕記

『 もとのもとは穀倉? 』

写真は昨年の春に完成した住宅です。居間の中央に、厚さ9㎝の銀杏の無垢板を使った食卓が置かれていて、存在感抜群です。扉の奥は6畳分の広さの土間になっています。

この家は、板倉構法というちょっと珍しい構法で建てられています。一番の特徴は壁です。在来工法では、柱の間に筋交い、または柱の外側に面材を取付けて、耐力壁をつくります。 それに対して板倉構法では、柱の側面に突いた溝に3cmの杉の厚板を落としこんで壁をつくります。

床材や屋根の下地材にもこの杉の厚板を使い、それがそのまま現しになっていますので、室内をぐるりと見渡すとすべての面が杉、という空間になります。

厚みのある杉板のもつ優れた調湿効果のおかげで、室内の湿度変化が抑えられます。また断熱性能も優れていて、安定した、良好な温湿度環境の室内空間が実現されています。 ちなみに、滋賀県南部に建つこの住宅、今年の夏はエアコンなしで過ごせたそうです。 厚さ、寒さの感覚は個人差が大きいので、一概には言えませんが、滋賀県下で数多く板倉構法の住宅を手掛ける工務店の話では、屋根にごく薄い断熱材を入れる以外は、寒冷地でなければ断熱材は不要とのことでした。

板倉構法はもともと神社建築に用いられてきた構法です。その神社建築は穀倉を原型としていると考えられているそうです。穀物を保存するために、堅牢であるとともに、温湿度を一定に保つ必要があります。そのための工夫が、住宅に使われた場合にも、安定した温湿度環境の室内空間を成立させたのだと思います。

2015/03/10

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