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第271回 栗原正明

『 菅田の墓地と納屋 』

何度も新聞に折り込まれて届く墓地の広告を見て、一度行ってみたいと思っていた。
墓地そのものにはそれ程興味が無かったけれど、案内図で示されたその場所、横浜市神奈川区菅田町の西端辺りは、自分の家から遠くないのに行った事が無い、未知の場所だったからだ。
今年の夏のある日、車で出掛ける時に、ふと思い付いてそこを訪れる事にした。
周囲の幹線道路までは迷わなかったけれど、そこから入って行く道は狭くて枝分かれや坂が多く、何度か間違えた末に目的地へ辿り着いた時には、ちょっとした達成感が有った。
墓地の前には宣伝の赤い幟が並び、中は奇麗に手入れされていて人影が無く、周りには森や田畑が広がる。
近くの道路脇には美しく、またどこか懐かしい一軒の納屋が建っている。
丘を越えた東側には集合住宅が並ぶ団地が有り、北側には戸建て住宅が並ぶ分譲地が有るのに、そうした街の気配は少しも感じられない。
墓地とその周囲の場所は、それぞれが接しながら関係を持たずに、別世界を作っているようだった。
そして、一体自分はどの世界に属しているだろうと考えてみて、どこにも属していそうにないけれど、それ等が集まった全体に属している事になるのかも知れない、と思った。

2014/09/22

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