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第259回 栗原正明

『 中華街での思い出 』

今横浜で一番人気が有る場所は、中華街であるらしい。
平日でも通りには人が溢れ、有名な料理店の前には長い行列が出来ている。
でも僕が子供の頃、この街は南京町と呼ばれていて、少し怖い感じがする所だった。
その理由の一つとして、店で働いている人達の愛想が良くないと言う事が有ったと思う。
それは中国でも韓国でも他の国でも同じようなもので、店員に日本人と同じような態度を求めるのは無理だと知ったのは、大人になってからだった。

何年か前のある日、その中華街へ母と2人で行き、食事をした事が有った。
料理は美味しかったけれど、給仕をしてくれた女性の店員は見事なまでに愛想が悪かった。
笑顔は無い、呼ばなければ来ない、何か言ってもろくに返事もしない。
最近はこの街も随分日本らしくなったと思っていたけれど、まだこう言う人も居るのだと思いながら、母がどう感じるかは少し心配だった。

「あの人、中国人かね。」
「たぶんそうだろ。」
「うちへ遊びに来ないかって誘ってみようか。」
「え、どう言う事?」
「何だか寂しいのかと思ってさ。」

僕が愛想が悪いと感じた態度を、母は寂しそうだと受け取ったのだった。
しかし僕は常識的な判断をしてその提案に反対し、彼女を家へ招く事は無かった。
今になってその時の事を思い出すと、多少嫌な事が起こっても母の言う通りにすれば良かったような気がする。

2014/01/06

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