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第231回 栗原正明

『 熱海の石畳 』

先日、建築士会の催しで熱海を訪れ、地元の方に街中を案内して頂いた。
新横浜から新幹線に乗れば30分程で熱海駅に着くのだが、今まで降りた事は数える程しか無く、街の事はほとんど知らなかった。

その熱海の海沿い、北側の伊豆山に近い所に、石畳通りと呼ばれる一角が有る。
戦前に開発された別荘地で、入り口にはかつて熱海ホテルと言う有名なホテルが有り、そこが戦後占領軍に接収された際に、道に石畳が敷かれたそうだ。
路面にはかなり凹凸が有って、運動靴でも歩き難い位だったが、それは坂を滑らない為の工夫だと教えて貰った。
この街に建っている建物は皆低層で、どことなく落ち着きが有り、敷地には緑が多い。
新しい道ができたせいで海岸へ直接出られなくなったのは残念だが、少し高い視点から望む相模湾の景色は、戦前とそれ程変わらないだろう。
長い時間居た訳ではなかったが、熱海にもこんなに良い所が有るのだな、と感心させられるような場所だった。

一方で、駅からそこに至る道のりは、自動車が多くて歩道は狭く、周囲には高層マンションが建ち並んでいて、とても魅力的と言えるものではなかった。
そして残念ながらそうした街並みの方が、熱海の街全体の印象を決めてしまっているように思う。
しかし、横浜や東京から近くて海も温泉も有ると言う恵まれた条件を考えれば、次々とマンションが建てられても不思議ではなく、今となっては石畳通りのような街の方が時代に合わないのかも知れない。
そうした中で良い街並みを考える事が、建築家や都市デザイナーに求められる役割だとすれば、その期待に応えるのは簡単な事ではないだろう。

2011/12/03

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