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第219回 栗原正明

『 東北へ 』

6月の4日から6日まで、東北へ行って来た。
3月11日の震災の後、初めて訪れた被災地。
以前勤めていた設計事務所で担当した名取市の建物に被害が出ていたので、復旧に向けた調査と打ち合わせに参加するのが主な目的だった。
その建物は4日まで、避難所として使われていたそうだ。

名取市は、仙台市の南隣に位置し、海側で津波による大きな被害が出た所だ。
訪ねた建物に津波は到達しなかったものの、余震を含めた地震により、内部の天井や壁などに損傷が生じてしまっていた。
幸い人的な被害は出なかったが、状況によってはその可能性も有ったはずだ。

建物が着工された16年前、自分は設計事務所から出向いた3人の中で最も年少で、経験も浅く、貢献したと言うよりは学ばせて貰ったと言う面が強かった。
色々な事を考える余裕は無く、ひたすら目の前の作業に一生懸命取り組む毎日だった。
その貴重で充実した、また懐かしくもある経験に、このような続きが有るとは思わなかった。

自分に関わる事を客観的に考えるのは、難しい。
あの時にした努力は無駄ではなかったし、間違ってもいなかった、と今でも思う。
でも同じように無垢な態度で建築に取り組む事はもうできない、とも思ってしまう。
そしてそのように思うのは、震災で何かが変わってしまったからではなく、何かに気付いてしまったからなのだ。
今できるのはただ、感傷的にならずに、できる事を一つ一つやる事、そうしながらまた、考え続ける事。
それしかない。
自分はこれからも建築に関わり続けるだろうし、またそうしたいと思っているのだから。

2011/06/18

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