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第209回 増田 奏

『 不思議な風景 』

横浜で好きな場所について紹介するのが、このコラムの統一テーマです。
ですが、私は今回紹介する場所をよく知っているわけではありませんでした。
それどころか、今日初めてそこを訪れたのです。
以前からその存在を気にしつつ、いつか行ってみようとは思っていました。
そこで、造園業(株)暖壇の茂木信君と仕事の打合せの帰りに寄ってみたのです。
(彼はarea045の会合で造園の話をしてもらったことがあります)
訪れてみて、茂木君も私も不思議な感覚に包まれてしまいました。
読者の皆さんも、説明の前にまず写真を見て下さい。

不思議な風景ですよね。御覧になってお判りのように、共同墓地です。
墓地は大きく5カ所に分かれていて、写真はその内の2カ所だけです。
「英連邦戦死者墓地」といって、もちろん横浜にあります。(保土ヶ谷区)
横浜には、有名な山手外人墓地をはじめとして4カ所の外国人墓地があります。
根岸外国人墓地。中華義荘(通称:南京墓地)そしてこの「英連邦戦死者墓地」
ここに埋葬されているのは、英国・カナダ・オーストラリア・ニュージーランド
南アフリカ・インド・パキスタンの戦死した兵士達。
「敷地は日本国民から贈られた」と記されていましたが、横浜の人でさえそんな
覚えはないでしょう。日本政府が所有して、永久貸与しているらしいです。
管理は英国がしているようです。植栽の手入れをしていた作業員に聴いてみたら、
「管理は英国」「自分たちは英国に雇われている」とあまり話したがらない様子。

茂木君の観察によると・・・
芝の端部の納め方などから造園設計は間違いなく英国人。
これだけの広大な敷地を管理するには、かなりな費用がかかるはず。
手入れは継続的になされており、さらに順次手を加えられている。
慰霊のセレモニーは年間を通じて頻繁に行われているようで、かつてエリザベス
女王やダイアナ妃も訪れたことがある由。それなら「治外法権」なのかな?と
おもいましたが、年間常時開門されていて誰でも入れますし無料。

えっ、横浜にこんな場所があったの! それに、今まで知らなかったのは何故?
(茂木君も私も横浜生まれ、横浜育ち、横浜在住。なのに今日が初訪問)

着いてすぐ、驚きとともに沸き起ったこの疑問ですが、歩いている間にだんだんと
収まって行き、しだいにその訳もごく自然なこととして納得できるのでした。
この場所について詳しく知りたいという好奇心も、なんだか失せて行くのでした。
だって、ここは静かにしておいてあげたい場所なのですね。

もちろん、知名度が上がって山手の外人墓地のようになって欲しくはないけれど、
横浜の人には一度訪問して欲しい場所として、紹介します。

2011/02/05

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