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第206回 藤江 創

『 横浜中央卸売市場 』

以前のコラムで書いたとおり、大学3年のときに横浜に引っ越してきました。
マイケルグレーブスという有名建築家がデザイン監修した、アルテ横浜(UR賃貸住宅)に住んでいたのですが、そこから見下ろせる位置にあったのが、今回紹介する横浜中央卸売市場。

アルテ横浜は、高層でありながら、エレベーターが2つしかない建築でした。20階以上の住戸に住んでいた私は、当事学生で時間が自由になったこともありますが、外に出るのが次第に億劫になり、よく窓の外から市場を眺めていました。
自分が寝ようとするころ、市場の活動は始まります。白み始めた空の下でトラックが列をなして光る姿はなかなか幻想的でした。そう、はじめは見て楽しむだけの対象でした。

あるとき、市場内で食事ができるという情報を母が入手してきました。卸売市場ということもあり、なんとなく入らず嫌いになっていたのですが、ものは試しと市場内のおすし屋さんに行きました。
場所の紹介がメインなので、おすしの感想はさておきます。市場を訪れたのは、市が終わったお昼過ぎでした。日が明るいのに人がいない巨大な空間は、かなり異様な雰囲気でした。昼に寝て夜働く空間というのはあるのですね。しかもこんなにでっかい空間が。「商業建築ってのはなにも昼に活躍するものだけじゃねーぜ」というニヒルな雰囲気がとてつもなくかっこよく思えてしまいました。

一度入り込んでしまうと、見るだけの市場が、使える市場に変わります。富山県出身で魚好きの父は、正月用の魚をこの市場で購入し、包丁を振るうのが年末の行事になりました。数回買い物に付き合ったことがありますが、昼間は閑散とした空間が一転、煌々と照明が灯された空間で、エネルギッシュな人たちが、エネルギッシュに働いていました。市場なのですから当たり前ですね。でも、当たり前のことを目の当たりにすると、人間感動するものです。小売はしていませんが、パーティーなどで魚を大量消費する予定がある人は、一度体験するとよいですよ

このコラムを作成するに当たり、久しぶりに市場を訪れました。昼間でしかも土曜日でしたから戦いの後といった感じです。きれいに片付いた空間に日の光がまぶしいです。今見てもやっぱりかっこいい。補足しますが、建築がかっこいいのではありません。その雰囲気がかっこいいのです。

今回、もう一つ素敵な風景を見つけました。場外といってよいのかわかりませんが、市場に至る途中にバラックともいえる小さなお店が並んでいます。そのノスタルジックな建築とその後ろにそびえるビル郡の対比は一見の価値ありと思います。銀河鉄道999によく出てくる、機械の体を手に入れた人間の住むビルと機械の体を買えない人間が住むスラムの絵。そんなイメージです。

2010/10/09

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