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第181回 栗原正明

『 港からの風 』

「横浜の好きな場所」と言うテーマでメンバー全員が文章を書く事になって、順番が回って来た。
自分は横浜出身と言う事になっているけれど、海など見えない郊外で育ったせいか、なかなか素直に考える事ができない。
父親のように街中で育ったハマっ子なら自慢できるような思い出が有るだろうし、他から来た人には綺麗な憧れが有るのかも知れないけれど。
自分が子供の頃は「横浜に行って来ます」と言って電車やバスに乗り、市内を移動したものだった。
改めて好きな場所となると、そんなに良い所が有るのかどうか、などとつい考えてしまう。

それでも横浜が嫌いと言う訳ではないのだ。
自分にとって横浜らしい場所と言えば、やはり関内と呼ばれる昔の居留地と、その周辺なのだと思う。
この辺りの一番の良さは、街と海が近い、と言う事だ。
それも砂浜や岩場ではなくて、人の手が隅々まで入った港に面した海。
ここの海は荒れ狂って街を襲うような事はまずなくて、外の広い世界へと繋がる窓になり、そこへ至る道にもなっている。
たとえ街には車が溢れ、緑が少なかったとしても、海の優しさと広さがそれを補ってくれる。

その海に近い日本大通りなどを歩いていると、港の方からの風がすっと傍らを通り抜けて行って、何とも言えず軽やかで清々しい気分になれる事が有る。
それは単純に気分が良いからと言うだけではなくて、古いしがらみが無く、新しい試みを許してくれるような、街の風通しの良さを同時に感じているせいなのだろうと思う。
横浜のそんな所が好きなのかも知れない。

2009/10/24

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