HOMEコラムINDEX>建築家のコラム
第172回 藤本幸充

『 横浜の好きな場所 山下公園レストハウス周辺 』

右手にはベイブリッジや鶴見つばさ橋。左手には大型船が停泊する大桟橋客船ターミナル。 そして水上警察や港周遊水上バスが出る亀腹ゾーン。タグボートの出入りも忙しく近景に船の動き、中景にターミナルや大型船、遠景はベイブリッジと、将に港の風景を堪能できる場所。
右側の白い建物がレストハウス。日韓共催で行われた2002年のサッカーワールドカップ。来浜する観光客対応を目指し完成した。すでに7年以上経つ。
屋根を白くしたら鳩の糞の餌食になり見られたものではない?との心配もどうやら懸念ですんでいる。(汚れもそれほど目立たぬが水平面近くで見ると黒ずみでうっすら縁取られている。)屋根は厚3mmのアルミ板。40cm間隔にリブ材が付きT字断面を構成する。ウレタン塗装、全体は10m X 50mの大きさ。一体ものでこの大きさだと冬と夏とで5cm伸縮する。雨樋も兼ねたエキスパンションをとり3分割して、伸縮を最小限に抑えている。
それでも10m X 20m程の屋根を陸上で運ぶのは困難。屋根を製作した鶴見の日立造船(当時)で台船に乗せ、タグボートで牽引し運河から横浜港に入り山下公園に横着け。
公園の岸壁は基礎部分が水中で海に張り出しており潮が満ちている時、作業を行わないと台船の腹をこする。午前中に終わらせねばならない。
木造住宅の建て方は5トンのラフターだがこの時ばかりは200トンのラフタークレーンが登場。台船から直接アルミ屋根を吊り上げ、メッキされた鉄骨の荷台に静かに下ろしセットされた。当時客船ターミナル建設現場には5台のクレーンが立ち怪獣の手足のごとく動いていた。面積比で1/100程度のレストハウスもこの時、活気と緊張感に満ちていた。
以上建設レポートのようになってしまったが、好きな場所の理由として自分が設計した建物がある事の外に上記のようなウォーターフロントの風景を椅子に座って見学できる点だ。
周囲の公園側にはインド水塔(関東大震災時被災したインド人を日本人が助け、その感謝の印として在日インド人協会が立てたドーム屋根の建物)があり、レストハウスはこの建物を引き立てる壁となっている。つまりインド水塔が神社でレストハウスが参道を形成するみやげ物店、のような配置にしている。それまでこの場所は管理事務所脇の目立たない所であった。公園内の要素を顕在化させる意図もあり、今回は帯状の周辺舗装も「参道」を意識、レストハウスの屋根先端も水塔の庇の高さに合わせ双方屋根の形も対比させた。
インド水塔ドーム屋根の天井、美しいモザイクもあわせ楽しめる。
また赤レンガ倉庫から延々と伸びてきた「汽車道」(ペデストリアンデッキ)はレストハウス脇で地上に降りる。ここの間歩行者は長いスロープをたどりながら景色の変化を楽しむ事が出来る。写真はこのデッキの上から撮っているのだが上から下まで高さを変えて眺められてしまう建物の設計はこれが初めてだ。

2009/08/22

>コラムINDEXへ戻る