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第128回 荻津郁夫

『 深夜電力利用電気ヒートポンプ温水低温蓄熱式床暖房による全館暖房 』

長ったらしい呼び名ですが、先日オープンハウスを開催した横浜山手の住宅で採用した暖房システムを名づけるとこうなります。
傾斜地に建つ地下1階地上2階、延45坪ほどの住宅です。地下はRC造、地上は木造、詳細は近日中にHPにアップする予定ですが、ここではその暖房システムについて初めて実感した感想をお伝えしたいと思います。

小さいお子さんが3人、家のどこにいても家族お互いの気配を感じていたい、という要望に対して、家の中央に地下から2階までの3層にわたる吹抜けを提案。2つの階段をずらして設け、光や風、声や気配の通り道としました。この空間を心地よく実現する鍵が表題の暖房システムです。

必然的にRC造となる地下階の躯体の内、天井にあたるコンクリートスラブ(すなわち1階の床です)を蓄熱体として、安い深夜電力(23時から7時:正確には電化上手夜間時間料金)を使い効率の良いヒートポンプで作った温水で夜のうちに暖めておきます。コンクリートは暖めにくいけど冷めにくい(熱容量が大きいといいます)ので蓄熱体(熱をためておくもの)に適しています。
朝7時以降はもっぱら蓄熱体=コンクリートからの放熱だけで(つまり電気代をかけずに)暖房を賄おうという考え方です。温水の温度は40℃程度に調整することで暖房効果は十分に得られ(一般の床暖房では温水は60〜80℃といわれています)、蓄熱体=コンクリートから上方向に2階分、下方向に1階分の全館が暖まります。
オープンハウスの日は突風が吹いて電車が止まるほどの寒い日でしたが全く問題がなく、むしろ大勢の人に来ていただいたせいか暑くて窓を開けるくらいでした。
実は設計時点では、念のために地下の床には別系統で床暖房を設置する案も検討していたのでした。地下とはいえ傾斜地なので南東側は庭に面して全面窓ですし床仕上もコンクリートを均したままです。しかし着工時点で無駄なものは切り捨てようということで別系統は中止。理論的には問題ないはずですが、工事中の現場打合せを地下で行なったときにはなんとも寒く一抹の不安がよぎったのでしたが、その心配は杞憂に終わりました。

因みに当日のそれぞれの表面温度は、地下床(コンクリート均し):22℃、地下天井(コンクリート打放し):32℃、1階床(無垢フローリング):24℃、1階天井(ボード塗装):22℃、2階床(無垢フローリング):22℃、2階天井(ボード塗装):22℃でした。地下の床がその天井面からの輻射でしっかり暖まることが実証されました。
床暖房は輻射暖房で、いわゆる温風で空気を暖めるのとは違い、いわば太陽の光(直射日光)が暖かいのと同じですから、当日の体感温度は温風暖房で室温26℃前後(実際の室温は1階21℃、2階22℃だったのですが)の感覚に匹敵するということができます。したがって室内の温度差も小さく、建物内部全体にヒートショックのない室内環境が保たれるわけです。さらに湿度もほぼ40%に保たれ、温風暖房にはない心地よさを実感することができました。

たまたま傾斜地に立地し、地下居室による容積率の緩和を受けつつ広く日差しを受けられる計画にできたこと、必然的にコンクリート躯体となる床を蓄熱体として利用したこと、構造的に多くの耐震用の筋交いが必要な壁に断熱を充填するのではなく外張り断熱としたことなど、意匠、構造、設備を融合させつつ、快適性と経済性を実現できたのではないかと思います。なにせ床暖房にかかる費用は月4,000円以下と想定されているのですから。

今後も詳細なデータの分析と住まい方を含めた実績のフォローを続けていく予定です。

2008/03/11

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