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第109回 高橋晶子

『ギャルソンを着るとき2』

過日のコラム「ギャルソンを着るとき」の続き。今回は「人」について書いてみたい。
コムコム西武池袋店の小林くに子さん。彼女が横浜店勤務だったときから私は彼女に相談しながら服を選んできたので、ずいぶん長いおつきあいになる。
まず似合うものを見分ける力、これは能力としか言いようがない。おすすめをさらりと、しかし積極的に言ってくれ、これがとても的確である。「高橋はこのような」っていうイメージが、小林さんの中で像を結ぶのだろうか。私があれもこれもと気をとられている時には、心のなかで「違う違う」と叫んでいるらしい。そうして買った服たちは何年も飽きることなく楽しめ、やがて物理的な寿命を迎えるものが多い。
次に記憶力。私はシーズンに1〜2回ショップに顔を出す程度の客なのに、以前購入した服をよく覚えていて「これはあれに合いそう」と話してくれる。またそれが的確である。
「高橋さんは黒より濃紺の方が表情に合う」と言ってくれたのも彼女である。黒で世の中に衝撃を与えたギャルソン、最初はやっぱり黒がいいなあと思って着ていたが、どうやら私のぼーっとした顔には強さを押さえた濃紺がよいのかも。黒だと「決め過ぎ」になってしまいそうなところを、微妙な差でオフにできるところが濃紺の良さでもある。

いつの頃からか、ギャルソンに行くのが小林さんに会える楽しみと一体化していった。ところがこの4月に突然、退職するという知らせが来た。びっくりしてとにかくショップを訪れ、失礼かと思いながら事情をうかがい、最後の服選びのおつきあいをしてもらった。つい最近の出来事なので、正直この次は彼女がいないという実感をまだ持てない。ただ欠乏感がひたひたと忍び寄ってくる。
小林さん、長い間本当にお世話になりました。

2007/06/06

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