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第8回 甲村健一

『・・・・残念!』

最近、景気が改善してきているというニュースを聞く。建築業界がそうかというと、まだ疑わしい部分もあるが、世の中の雰囲気で感じることもある。以前、景気のいい時には、楽しくテンポの速い音楽が流行り、明るい色が街に溢れ、景気の悪い時はその逆の文化が流行ると聞いたことがある。お笑いの世界もそうらしく、今思うと、80年代、小学生のころ(私は愛知出身)、数少ないが放送される関西系の番組で、土曜の昼間の吉本新喜劇を見るのが楽しみだった。中学生に入る頃が漫才ブームだった。日本中が笑っていたような気さえした。

そんな光景に似た雰囲気を、最近体験した。建築家という職業を始めてから、夜寝る間もなく働いていて、ゆっくりテレビを見ることなどほとんどなくなっているのだが、たまたまテレビをつけてみると、気のせいか漫才を見かけることが多くなった。また笑えるような世の中になってきたのだなと思える日があった。

そんなほっとするような日を過ごせるようになったつい先日の休日、久しぶりの休日に妻と行きつけの高級ブランド?「ユニクロ」へお買い物に行った。デブには大敵の暑い夏が終わり、ようやく身の露出が少なくなる季節に、どことなく安心感を抱きながら店舗に入った。

いつものコーナーに立った。そう、あれほどの多くのサイズをそろえているユニクロで、最もウエストの大きい100cmのズボンのコーナーである。当然種類も、色も選べるほどはない。しかし、必ず自分にぴったりの商品があるという安心感がここにはあるのだ。「あった!」。今日もいつものサイズが見つかったのである。棚の上の方・・・。探すのは慣れたものである。ちょっと自慢げな僕でもあった。それをもって試着しにいく。とはいっても、他に比べるサイズもないのだが、何となく皆と同じ行動を自分もしているのに、その時気づいて、少しおかしな感じもしたが、ニタニタしながら、はいてみた。

「・・・・おかしい。・・はけない。」思わず手に力が入る。また太ったか?とうとう一線を越えたか?自分の中で緊張感が走る。その時、カーテンがあいた。妻である。笑顔で一言。「・・・・残念!」。やられた。そうだ先日のテレビ番組は、妻も一緒に見ていた。ギター侍の言葉だ。

あれから、数日。味覚の秋に突入したのにも関わらず、どこか食事がおいしくないような気がする。そんな気分のある日。先日竣工を向かえ、無事引渡しを行ったお客様が突然事務所にお越しになった。「もしかして何か問題でもあったのだろうか???」。あれから何か悪いことを思い浮かべると、どこか頭の中で「・・・残念」というこだまがする。「御無沙汰しております。・・・・」お客様が御挨拶してくれた。訪問の理由は、快適に暮らしているというお礼の挨拶だった。その時思った。お客様にだけは、あの言葉を言われないように頑張ろうと!・・・・そう、そして今は、また食欲旺盛である。(笑)
2004/09/20

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